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常に一般市民から蔑まされる最下層民クラシュク。行動は日常的に厳しく管理・監視されている。
それでも、基本的に収容区の中にいる時は自由な行動が許されている。
しかし、方針が変わった。
収容区内においても、外出が大幅に制限されることになった。
外出時は制服が義務づけられ、夜8時以降の外出は禁止。
4人以上の集会の禁止。飲食店での酒の提供の禁止。食料、日用品は自由に買うことを禁止。すべて配給となる。
そもそも収容区自体が大幅に縮小されることとなり、区画整理の対象となる土地に住居があった者には退去命令が出た。新しく住居を建てることは禁止とされ、住居を失った人々は一方的に住む家を決められ、無理矢理に別の家族と住まざるを得なくなった。ただでさえ狭い住居に二世帯が住むという構図である。
押し込められている生活が、さらに押し込められる。
鬱憤は幾重にも蓄積し、家庭内における暴力が増加。
それ以上に増えたものが『アルクタ民』に対する暴力だ。
アンツ少年もそれは感じていた。今回は特に。
いつもならばとっくに気が済んで罵声を吐きながら去って行くのだが、今日は治まろうとしない。
それどころか、
「俺。いいこと思いついた」
と一人が言い出した。その発言は少年を震え上がらせるに十分だった。
「こいつを“悪魔の穴”に閉じ込めよう」
それは親からも『アルクタ民』の長老からも執拗に言われていること。“悪魔の穴”に近づいてはならない。その穴に閉じ込めるなど。
今までこの四人に何度も蹴られた痛みを忘れてしまう恐怖が少年を襲った。
「見ろよ。こいつすげええ怖がってるよ」
4人が声を上げて笑う。
「いいねえ。やっちゃおう」
少年が抵抗するも4人に両手両足を掴んで持ち上げられてしまった。
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