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暗闇の中でアンツ少年は目を覚ました。
体を起こすとまだ傷む。
くそっ。さんざん蹴りやがって。
それでも痛みを堪えて立ち上がる。
ところが困ったことに気づいた。方向がまったくわからない。
すでに夜になってしまっているのだ。昼間であれば、光を頼りにすればいいのだが。
風の動きをわずかに感じて、そっちがおそらく出口だろうと考えて歩きはじめた。
少年は歩き続け、自分の判断が間違っていたことに気づいた。あいつら4人が自分をぶら下げて歩いたであろう距離をとっくに超えたにも関わらず出口にたどり着かないからだ。
それでも少年は引き返すことはしなかった。
洞窟はまだまだ続く。その先に何があるのか・・・。
ここは“悪魔の穴”と呼ばれる恐ろしい穴。幼い頃から何度も何度も教え込まれて来た、近づいてはならない場所。
その場所に今自分はいて、奥へとどんどん入って行くのだが、一向に悪魔は出て来ない。
帰ったとしてもどうせ「いじめの日々」は続く。外に出れば緑頭と蔑まれては殴られ蹴られ、家でも両親や兄たちから同じように殴られる。
もう、帰りたくない。
アンツは穴の奥へと進んだ。
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