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かつて、穴を通って魔獣が出現していた。一匹出現しただけでも、人々が幾人も死に建物は壊され、街が甚大な被害を受けた。
その討伐を引き受けていたのが『アルクタ民』だ。実は『アルクタ民』は身体能力に優れる。他の民族では立ち打ちができない魔獣を倒すことができた。
『アルクタ民』は“悪魔の穴”付近に住むことを要請されたのである。“悪魔の穴の番人”として。
ところがいつしか魔獣が出現しなくなった。そうすると『アルクタ民』へ対する尊敬も時の経過とともに薄れていく。その高い身体能力だけが恐怖の対象となり、差別という縄で縛りつけておくことが得策とされるようになったのである。
“ゴミ捨て穴の番人”として。
長老も自分が長老となる頃に先代から聞いた話だった。
すでに300年前からはじまっている話だということで半信半疑であり、“悪魔の穴”に近づいてはならない、ということだけをしきたりとして信じるように民たちに伝えてきたのだ。
アンツの親にもその話をする必要もないと判断した。こんな話は自分だけが知っていればそれでいいのだと。
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