社交界デビューの日

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プライドが高くて、王太子に縋ることもできず、人形のように顔色ひとつかえないつまらない女だと誰かが言った。 それに比べて王太子の恋人は、元平民ながら心やさしく笑顔をたやさない明るい女性で、王太子が心変わりするのも頷ける。 聖女としても出来損ないだと言われていることをわたしは知っていた。 その日、わたしは彼のエスコートで舞踏会に向かった。 同じ馬車に乗り、隣に立ち、腕を組んでも、彼を遠く感じていた。 今噂の彼女とはどんな間柄ですか。 恋人というのは本当ですか。 そう訊くのは簡単なはずなのに、わたしにはできなかった。 頻繁に顔を合わせていた頃とは違って久々に会ったというのに、わたしたちの間にはきまずい空気だけが流れていた。
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