奇妙な出会いと果実酒

1/3
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ

奇妙な出会いと果実酒

「もう討伐してきたのか!?」  店の主人であるセトが、目を剥いた。  無理もないことだ。なんせ依頼を受けて三時間後のことだったから。    ――冒険者は主に、それぞれの町や地方にあるギルドにその身元が登録される。  極たまにの冒険者という未登録者もいるが、だいたいの場合はこれだ。  そしてそこから、日々更新される依頼(クエスト)を受けるという流れ。  このルイト・カントールもまた登録冒険者であり、国一番のすご腕狩人(ハンター)と呼ばれていた。  今回だってそう。  通常なら二人以上のパーティでこなすクエストと、たった一人で。しかも受注して数時間で達成してしまったのだ。  それだけでも、この青年の実力がわかるというもの。   「ま、楽勝だったけどな」  得意満面に応えたルイトは、大ジョッキの麦酒(エール)をあおる。  ここは街に多くある酒場のひとつ。  我が国。  大国エアリクルムの玄関口ともいえる町には、沢山の人々が行き交っている。  商売人から旅人。そして兵士たちや、全国から集まった冒険者達まで。  人種も種族すら違う者が共存する、いわば大都会。  当然、歓楽街には様々なタイプの酒場や風俗店が多くひしめいている。   「ふーっ。オヤジさん、もう一杯」 「あいよ」  ルイトの飲みっぷりの良さに酒場の主人、セトは顔をほころばせる。   (あぁ。やっぱりここがいい)  もっと沢山の種類の酒を飲ませる店なら、片手で足りないくらいあるだろう。極上の女をはべらせることの出来る、サービス満点の店だって。  しかし彼はここが良かった。  田舎から出てきて、最初に入ったこの店が。  昔ながらの酒場、という感じの。温かみのある雰囲気や、常連たちの和やかな様子。  そして何より。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!