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「はかぜって言うの?はかぜってなんだか博士みたい。よし、じゃあ今日からお前のことハカセって呼ぶよ!」
そう言ったのは1年生の時に同じクラスだった隣の席の男子生徒だった。その男子生徒にとっては何気なく言ったひと言でも、自分がどんな人間かわからない爽太にとって、それは目標になった。
「じゃあ私もハカセって呼ぶね」
「俺も!」
あっという間に広まったハカセというあだ名。1か月もたたない内に葉風爽太のことをハカセと呼ばない人はいなくなった。
本やテレビで見る博士は白衣を着ていたり、眼鏡をしていた。白衣はさすがに小学校に着ていけなかったから眼鏡をかけた。白のシャツにニットを着て見た目を大人しく、真面目に見えるようにした。
「ハカセって、見た目は博士みたいだけど運動神経が良いからなんか博士っぽくないよね」
そう言われたからハカセだけど博士っぽくないように、運動はできるけど勉強はできないハカセになった。
そうして、爽太は今日もハカセとして生きていく。
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