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少女2人が謝り教頭の話を聞く姿勢に戻ると、若い男の先生はそれを確認して元の体育館壁際の教員スペースに戻った。今は1学期始業式の最中。この若い男の先生こと小島大知(こじまだいち)は、十数年ぶりにもどってきた母校の懐かしさに浸っていた。全校生徒600人余りの比較的人数の多い生徒達が入っても、体育館は狭さを感じさせない。自分が子供の頃よりは古くなった建物に時間の経過を感じる。
「では次に表彰に入ります。6年2組、雛川琴子(ひなかわことこ)さん」
「はい」
シンとした体育館に鈴を転がしたような澄んだ声が響く。生徒の間を通り、堂々と檀上に上がったのは日本人形のような美少女だった。目の上で切りそろえられた前髪に、大きな瞳。綺麗な黒髪は腰まで伸ばしている。白のブラウスにネイビーのワンピース姿の少女はいいところのお嬢様にしか見えない。その姿が、大知がよく知る人物と瓜二つで目を見張る。ありえないと思うのに、ある人物が重なり軽く頭を振る。ただ似てるだけだ、そう自分自身に言い聞かせる。すると、檀上から教頭の声が聞こえ、少女が「全国空手道優勝」の賞状を受け取っているところだった。
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