15人が本棚に入れています
本棚に追加
※
「ねぇねぇ、ちょっと聞きたいんだけど!」
「で、出たぁ!!」
昼休み。爽太はこの1週間で日課になりつつある質問をした。対する相手は1年生の男の子。生徒の会話で賑やかな廊下に小さな悲鳴が上がる。爽太の姿を見るやたどたどしい足取りで逃げ出した。ここまでも日課通り。爽太はぐいっと緑のフレームの眼鏡を押し上げると、後ろ姿の男の子を見る。ざっと5メートルくらい。爽太は軽く走り出した。
「待ってー!」
「え?速っ!!」
数秒で縮まる距離に男の子は驚きの声を上げる。そのせいで更に遅くなった男の子の襟元を軽く爽太は掴んだ。
「つーかまーえた!」
「ひぃ!!」
爽太が笑顔で男の子の顔を覗きこめば恐怖で潤んだ瞳と目が合った。さて、どうしたものかと爽太は考える。この1週間、爽太達は七不思議の調査として生徒に聞き込みをしている。けれど結果は惨敗、大失敗。1人も聞き込みが成功しない。
最初のコメントを投稿しよう!