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こうやって怯えられてしまう。爽太はそもそも会話が苦手だった。話しかけるのは得意だけど、相手から返事が返ってくることが稀なので、どうやれば会話が広がるかがわからない。周りのクラスメイトを見習って笑顔を心がけているが中々どうして上手くいかない。
「ハカセ、その子泣いちゃいそうだよ?離しなよ」
「でも、何も聞けてないよ」
「いいから」
後ろから着いてきていた琴子にそう言われて手を離してあげれば、男の子は目に涙を浮かべながら逃げて行った。周りにいた生徒達から冷たい目で見られる。
「また6年のハカセ達だよ」
「ああして俺達下級生をいじめて楽しいのかな?」
聞こえてくる会話に爽太はやり過ぎたと思った。見回すと、1年生の教室の前の廊下には十数人の1年生と見られる生徒達が集まっていた。教室からも何人かこちらの様子を見ている生徒がいる。どの生徒も警戒心を隠そうともせず睨みつけてきていた。確かにこれ以上この場にいるのはまずそうだと爽太は判断した。
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