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「何をしているのですか!」
その時、生徒の人垣の奥から女性教師の声が聞こえてきた。視線を向ければ1年生の担任の先生がこちらに真っ直ぐ向かってくるのが見えた。
「先生、あの人たちです」
先生の横にはさっき爽太から逃げた男子生徒が、こちらを指指しているのが見える。
「わ、先生だ。ハカセどうしよう」
「ぼくに言われても…」
「…ハカセ、琴子ちゃん、こっち」
爽太と琴子が突然の事態に慌てていると、同級生男子としては少し高めで、声量は小さいがはっきりとした声が耳に入ってきた。声の主を探せば、下級生の人混みに紛れた龍太郎と目が合った。伸ばされた左手に、爽太は右手で掴み、左手で慌てている琴子の右手を掴んだ。
「へ?」
「…2人とも、逃げるよ」
「うん!!」
まだ状況がわかっていない琴子は呆けた顔をしているが、龍太郎の言葉に爽太は元気よく返事をして、琴子の腕を引っ張った。先生に捕まらない為に、3人は人混みを縫って1年生の廊下を走り抜いた。
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