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「………もう……走れない……」
「そお?ボクはまだ全然走れる!」
「ぼくも!」
1年生の教室からはだいぶ離れた所まで走ってきた3人は、校庭が見える3階廊下の窓から外を眺めていた。窓から吹く風は心地よく、少しだけ火照った頬を冷ましてくれる。
肩で息をする龍太郎を横目に、息1つ乱していない爽太は校庭をぼんやりと見る。もうすぐ昼休みが終わる時間だというのに、生徒達はドッジボールやサッカー、鬼ごっこに夢中になっていた。走り回るどの生徒も楽しそうに笑っている。ふと横に気配を感じて視線だけ向ければ、琴子が爽太と同じように窓枠に頬杖をついて外を眺めていた。その眼差しは遊んでいる生徒達に向けられていて、どことなく羨ましそうに見える。
爽太達のいるこの廊下は人気が全くなく、3人だけの空間だ。校庭の生徒達に比べれば人数は少ないし、寂しく思えるかもしれない。けれど、爽太は近くに一緒にいてくれる存在というものが今まで無かった。だから1人じゃない、そのことにどこか安心感を覚えた。
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