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「葉風くん大丈夫かい?すまないね、私も探すから」
どこかに資料を置いてきたのだろう教頭も眼鏡を探し始めた。でも見つからない。大丈夫だと自分に言い聞かせるが、爽太の背中には冷や汗がつたっていた。
「…あれ?…ハカセの眼鏡、掃除用具入れの影に隠れていたよ」
「本当!」
「…うん。そこの資料室の入口の横にある掃除用具入れと壁の隙間に入り込んでいたみたい」
すると、さっきまで黙って眼鏡を探していてくれた龍太郎が、緑のフレームの眼鏡を両手でそっと持って来てくれる。
「ありがとう、龍太郎。助かるよ」
立ち上がって龍太郎の元へ近づくと、龍太郎はそっと眼鏡のフレームを持って差し出してくれた。レンズ越しに龍太郎と目が合った。
「…これ…」
「いやー、ぼく眼鏡が無いと何も見えないから助かったよ。本当に龍太郎ありがとな!」
「…ハカ…」
「教頭先生も琴子も探してくれてありがとう!」
龍太郎は何か言いたげに爽太を見たが、爽太は気にすることなく眼鏡を定位置に戻した。緑のフレーム越しの目と目が合う。にっこりと細められた瞳に、龍太郎は小さく溜息を吐いた。
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