15人が本棚に入れています
本棚に追加
「子供は風の子だからね。やっぱりいつでも半袖短パンよね!」
「…うん。そうだね」
気温が一ケタの寒空の下、龍太郎は母親にそう言われても笑顔を崩さなかった。
「りゅうはよく風邪をひいてしまうから、日頃から寒さに慣れないと」
「…うん」
母親と龍太郎の呼気は白い煙のようになって空に昇っていく。龍太郎の両腕両足には鳥肌がたっていた。
「うー、やっぱり外は寒いわね。大人の私にはこたえるわ」
「…お母さんが風邪をひいちゃうよ。早く家に入って温かくしてね」
「りゅうは本当に優しいね!りゅうも気をつけて学校に行くのよ」
「…うん。いってきます」
「いってらっしゃい!」
明るく笑う母親は茶色のダッフルコートに、マフラーを巻いて防寒対策をしている。対する龍太郎は半袖短パン。衣服から除く手足は程よく日に焼けているが、絆創膏があちらこちらに貼られていた。黒いランドセルを背負いなおす手は寒さで震えている。その光景を見ていた数人の近所の人達には眉を潜められるが、龍太郎は気にしない。
最初のコメントを投稿しよう!