プロローグ

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隣の席の江藤先生がそのプロフィールを覗きこむ。 「江藤先生は知っているんですか?」 「知ってるも何もこの3人はこの学校の有名人ですから」 「へぇ、そうなんですね」 「はい。有名で…3人ともクラスに上手く馴染めたことがないんですよね」  江藤先生の言葉に、大知は黙って頷いた。クラスを受け持つ時にある程度渡される今までの生徒達の交友関係。この3人だけその情報が全くなかった。つまり、3人とも教師が知る限りでは友人と言える人物がいないのだ。6年生、小学校の最高学年。その中で親しい友人がいないのはどれだけ寂しいのだろうか。大知はまだ直接話したことがない3人を思う。もしかしたら、なんとも思っていないかもしれない。でも、寂しいと思っているかもしれない。教師として自分ができることは…大知は1人、椅子に座り直して考え込む。ふと、プロフィールの下に置いた自身のプライベートの手帳が目に入る。 「あ、そうだ。これがあるじゃないか」  この3人の能力は同学年の中でずば抜けている。実力は申し分ない。ならば、自分のこの仕事を手伝ってもらうことと同時に交流を持てるのではないか。大知は妙案だと自然と笑みを深めた。
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