1 睦月 ①

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1 睦月 ①

四方を分厚いコンクリートの壁に囲まれた部屋。 北側の壁に小さな窓が一つ、反対側に出入り口の鉄製のドアが設えてある。 机と椅子が一組とベッドが置かれただけの部屋の中…此処が俺の世界、俺に与えられた生きて行く為の空間だ。 『キミはこの部屋から出てはいけない』 「どうして?」 『キミは他人と会ってはいけない』 「どうして?」 『キミは何にも誰にも触れてはいけない』 「どうして?」 繰り返される禁止事項 問い続ける “どうして?” どうして?どうして?どうしてっ!! 返される答えはいつも同じ 『キミが    だからだ』 でも…何故かいつも肝心な処が聴こえない。 机も椅子もベッドも、この部屋に閉じ込められた時はそれ等が全て大きく感じられた。 なのに今は、そのどれもが丁度いいサイズになっている。 それがどういう事を意味するのか…今となっては考えるよりも先に答えが頭の中に浮かぶ。 俺はこの部屋の中でしか生きる事を許されない。 そう、生まれた時から死ぬ瞬間までずっと… 窓もドアも鍵が掛かりほんの僅かな隙間から見つめる空は、いつも何処までも遠く永遠に広がっている。 俺もいつか、あの空の下を歩けるだろうか…
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