トライアングル・ライツ

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 胸ぐらを掴み、恭介はもの凄い形相で睨んだ。必死さがひしひしと伝わってくる。安心した、やっぱ『恭介に女がいる』なんて愛奈のデタラメだったんだ。そりゃそうだ、ずっと愛奈のこと好きだったもんな。 「分かんねえから聞いてんだよ、ほら言ってみろよ」 「それは雄介が……」 「俺がなんだってんだよ!」  その瞬間、恭介の胸を勢いよく押し返し、思いっきり左頬をぶん殴ってやった。拳が潰れる音と共に熱と痛みが走る。「やめて!」と腕にしがみつく愛奈を振り払い、尻餅をついた恭介に馬乗りになって胸ぐらを掴む。 「なあ、恭介。いい加減、俺に怯えるのやめろよ」 「別に怯えてなんか……」 「怯えてるじゃねえか! 愛奈の中にいる俺によ! それに愛奈が気づいてるから……不安だから、こうなっちまってんじゃねえのか!」 「……」 「そうだろ? 愛奈」  愛奈はぼろぼろと涙を溢して何度も頷いた。  きっと愛奈は誰かから『俺を結婚式に呼ばない』って話を聞いて、恭介に気づいて欲しかったから俺に会いに来たんだ——変わらなきゃ前に進めない、って。  それに愛奈。昨日の事だけどさ、あれは俺の気持ちを試したんだろ? 俺が恭介の気持ちを知って身を引いたの、バレてたんだな。 そうだよ、愛奈。今でもお前の事が…… だからもう、俺は逃げないよ。
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