トライアングル・ライツ

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「……キツイな」  その時、インターホンが鳴った。夜だというのに遠慮のない音量に辟易しつつも、重たい体を起こして玄関へと向かう。こんな時間に一体誰だろう。無用心にも確認せずに鍵を開けた。そして目に飛び込んできた人物に言葉を失った。 「……久しぶり」  遠慮がちに苦笑いを向ける相手に驚き隠せないでいた。なんで愛奈がここにいる? 思考が追いついてこない。ちょっと待て、もしかして——ハッと気づく。これはもしかして恭介が仕掛けたドッキリか何かか?  思考を巡らせてたどり着いた結論に徐々に冷静さを取り戻していく。ただ、突然現れた愛奈を見て心臓がグッと掴まれるような息苦しさも同時に感じた。 「驚いた?」 「ああ、そりゃそうだろ」  平然綽々(しゃくしゃく)と答える俺の様子に少し不満そうに口をつぐむ愛奈。あの頃と変わらない仕草に一瞬だけ昔と重なって、もやっとする。 「突然どうした。というか、なんで東京にいるんだよ」 「ちょっと旅行にね」 「ああ、そうだろうな。ところで恭介は? 一緒なんだろ」
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