トライアングル・ライツ

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 愛奈とドアの間から顔を出して通路を確認する。息を潜めるように外は静かだった。 「ううん、一人だよ」 「そんなわけないだろ。おーい、出てこいよ、恭介ー」  返事はない。まだ揶揄っているのか。「結婚式に来んな」とか悪い冗談を言いやがって。しっかり仕返しをして—— 「だから、私一人だって」 「だって、さっき恭介が……」  そこでハッと言葉を切った。恭介との会話を思い出す。よくよく考えれば、恭介はふざけてあんな事を言う奴じゃない。思い詰めたように、声を絞るように、言いづらそうに言った一言が演技なはずがない。  急に怖くなった。じゃあなんで愛奈がここにいる? 恭介はこの事を知ってるのか? こういう事態を恐れて恭介は電話をかけてきたんじゃないのか——?  再び混乱しだす頭に鋭い冷たさと熱が帯びる。鼓動は乱れるようにテンポを上げた。目の前の愛奈を呆然と見る。真剣な眼差しが俺の泳ぐ目を捉えていた。戸惑う俺を見つめて愛奈はゆっくりと口を開いた。 「ねえ、三日間だけ雄介との時間をちょうだい」
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