トライアングル・ライツ

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「そりゃ恭介もそう言うわ」  俺だって同じ立場だったらお前に来んなって言うだろうね、辰巳は飲み干したジョッキをテーブルに置くと、ふんぞり返った。そうはっきり言われると苦笑いを浮かべるしかない。頭を抱えたいのを堪えてビールを喉に流し込む。辰巳には愛奈がやってきたことは伝えていない。 「だってさ、成人式の時の事、覚えてるだろ」 「何度もお前から聞かされてるからな」  いやいや雄介は何も分かっちゃいない、と不服そうに大袈裟なため息を吐く。仕方ないだろ、当事者なんだからと言い返したくなるのをグッと堪える。気づいたらジョッキの中が空っぽになっていた。  注文したビールを待つ間も辰巳は酔い任せに成人式後の同窓会事件について熱弁を振るった。別名、愛奈失踪事件。俺がその事実を知ったのは同窓会後、東京に戻ってきてしばらく経ってからのことだった。その話を聞いたのも辰巳からだった。 「あの時、出世頭の雄介様が東京で出来た彼女を自慢し出してさ」 「だから違うだろ。お前らが勝手に冷やかし始めたんじゃないか」  そのくだりは何回も聞いた。そしてその後に続く話も。俺の反論に耳を傾けることもなく辰巳は続けた。 「まあタイミングが悪かったと思うよ。やっと愛奈もお前の事を忘れ始めてきた頃だったしさ」 「……」
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