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強襲(1)
店を出ても舞子の興奮は収まらなかった。
(悔しいね蕾香。例え私1人でも、あいつらを裁いてやるからね)
流れる涙を拭いもせず、とぼとぼと夜道を歩く舞子。ふと人の気配を感じ振り返ると、小林が追ってきていた。舞子は驚き目を見開く。
「待ってくれ、舞子ちゃん」
小林は焦りの表情で、舞子に声をかけた。
「なん……ですか?」
「いきなり悪かったよ、でも君が好きなのは本当なんだ。不幸な出来事を忘れるためにも、俺たち付き合わないか?」
到底正気とは思えない。
「何でそんなことできると思うんですか?まずあなた方が蕾香に謝って、罪を償って……いや、何をしても足りないのに!」
小林はヤレヤレという表情で舞子を見るが、すぐに嫌な目つきで、
「まあいいや、こっち来いよ」
と言い、舞子の口を塞ぎながら暗がりに引きずり込んだ。周辺は新興住宅地の未開発エリアで家の灯りもない。もみ合う2人は茂みに倒れ、小林が上になる。
「いいから俺の女になれ!彼氏を売る女なんていねーからな。金なら自由に使えるんだ、欲しいもの買ってやるよ。な、事故とか死に損ないとか嫌なことは忘れて、楽しくやろうよ」
小林は強引に舞子にキスしようとするが、舞子は渾身の力で抵抗する。
「いや!いやだ!なんて人なの!」
舞子は腹の底から拒絶の声を上げる。
「もう!いやだー!」
刹那、小林は凄まじい力で後方に飛ばされ、近くの立木に背中を叩きつけられた。
「痛った……何を……」
舞子は比較的長身だが、体格は華奢で女らしい。いや仮に男性でも、筋骨隆々のラガーマンを数メートルも投げ飛ばせる者などそういないだろう。
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