首無し幽霊は思い出のネックレスを探している

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 どこにでも居る苦学生だと、自分では思う。どうしても都会に出たくて、この春から一人暮らしを始めた。ただ、学費の他に生活費の負担まで両親にかけるのは気が引けたので、ラーメン屋とコンビニのバイトを掛け持ちしてなんとか暮らしている。  そんな俺に紹介されたのが、あの家賃1万3千円のアパートだった。  駅近3分、風呂トイレ別の8畳間。さらに家具とエアコン、温水便座まで付いている。正確に言えば、借りる時に大家さんがオマケをしてくれたので、家賃は1万円ぽっきりだ。  誰がどう見ても、正真正銘の曰く付き物件。だけど別にそこで事件が起きたというわではないらしい。ただ、どうしても借りた人がすぐに出ていってしまい、お金にならないという。つまりは出るというわけだ。  頼まれたって住まないと思っていたが、破格すぎる金額に惹かれて、見るだけみてみようと内見を申し込んでしまった。  そうして連れていかれたのは、リフォームされたばかりにしか見えない、とても綺麗な部屋だった。  天井に一部かすかなシミがあったが、それ以外は新品同様だ。実際、永らく住んでいた人もおらず、備え付けの立派な家具もピカピカだ。  おどろおどろしい不気味な部屋をイメージしていた俺は、ほぼ即決だった。  そうして引っ越しを完了したのが3週間前。初日はかなり緊張してなかなか寝付けず、天井のシミが人の顔に見えるなんてベタなビビり方もしたのだが、今ではすっかり快適に過ごせるようになっていた。  それが昨晩になって、いきなりあんなものが現れた。
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