プロローグ

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プロローグ

 真っ青な空に轟く排気音。二つの機影が並んでまっすぐ上昇していく。次の瞬間、白煙(スモーク)と共に二機が分かれて正反対の方向に旋回し、降下。青空を背景に、大きなハートマークが描かれる。  そしてもう一機の飛行機が、スモークを引きながらそのハートの真ん中に向かっていく。スモークが途切れた、と思ったら、飛行機がハートマークから外れた瞬間、再びスモークが復活。まるでハートを矢が射抜いたように見える。 「大きなハートマークに矢が刺さりました! 『バーティカル・キューピッド』、大成功です!」  場内放送と共に、大きな拍手が沸き上がる。  中学一年の時、お父さんに連れられてやってきた小松基地航空祭。とても広い駐機場(エプロン)なのに、見渡す限りの人波でごった返していた。コンクリートの地面から立ち昇る熱気に、私はフライパンの中で炒められている野菜になったような気がして、げんなりしていた。だけど、航空自衛隊の曲技飛行チーム、ブルー・インパルスの演目が始まった瞬間、そんな気持ちは一気に吹っ飛んだ。
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