本の人探し

　その時、私は化学での薬害について調べるレポート課題の為に学校に附属している図書館にいたんです。私は特にやる気があるわけではないが自由度の高く自分の意思が前面に出しやすい課題においては見栄を張りたがる……まぁ普段目立たない根暗にありがちな思惑を持っていましたね。
　科学関連は1F一番奥、まず最初に中学3年生の時現代社会の授業での似た課題で選んで、既に目を通したことがあった本を確認した後、調べたい薬害事件単品を扱う本を手に取って。
　空間の隅の方の椅子でメモ用のスマホ片手に(本来はマナー違反かなんかで駄目だった気がする)読んでいた時、本の最後のページに妙な隙間が空いていることに気がついたんです。開くと挟まっていたのは紙を何回か折り重ねていただけのものでした。広げると一辺がぐちゃぐちゃにちぎれていてノートから1枚を雑に剥がしたものでありました。
　それの左下の角に寄せて整った字が書かれていたんです。

　さがしてあげてください

　わたしもさがしています

　わたしにやさしくしてくれた男の子が

　家でも寝る時でも学校のでも一緒だった

　のにいつの間にか消えちゃった

　みんなも一緒に会ったのに

　知らない、知らない言うから

　もう誰が味方かもわかりません

　学校にも来てたから

　きっとこの学校の人でしょう

　知ってる人は1年8組まで

　お願いします

　私の話はこれだけです。幽霊とかヤバイ人に出くわすみたいなものを期待していた人はすいません。実際これはただの悪戯かもしれないですし、悪くてもこれを残した人が恐ろしい人だと想像するだけでしょう。でも裏返して"何も""描かれてない"面にこんなことが書いてあったのがゾっとしたんです。

　これが似顔絵です

　……前述の何にせよ私は気になりました。だって挟まっているということは誰かが返してから誰も借りてない可能性が高いでしょう？　少なくとも返した時にあったなら司書や図書委員の人は気づくでしょうし、何より態々人に気づかれるためのものなのですから。ですから私は変な人がいないか周囲に聞き込みしましたし、一応昔のことまで聞いたりデータを調べる調査をしたりしましたが何も引っかかりませんでした。
　どうしてもどうしても気になります。一度踏み込んだんですから、そして根暗な人間の調査の手の届く範囲には限界があると思ったので私は閃いてしまったのです。あの紙を見た日からあんなのかなとこんなのかなと想像した似顔絵をほらこんなにいっぱい描いて、たくさんたくさん丁寧に折って挟んだんですよ、ジャンルを問わずいろんな本に挟みました。みんなが協力すればきっと見つかります。僕も助かるしあの子の喜ぶ顔が今からもう待ちきれないんです。