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探し物があるの、と声をかけられる。少女だ。まだ小学校高学年くらいだろうか。
周りには人がいない。いや、そんなはずはない。急行も停まるような大きな駅の駅ビルの中、今日は日曜だからそんな空間に誰もいないなんてことがあるはずがない。それでもこのあたりに見える人は僕と彼女の二人だけだ。
「探し物を、手伝ってほしいの」
少女が話を続けようとする。
「私の身体がどっか行っちゃったの」
「身体が? でも君はここにいるのに」
「私はここにいるのに私の身体がないから困ってるんだよ?」
当たり前のように話す少女がこの世のものとは思えなくて後ずさる。彼女には彼女の常識があって、それは僕のものとは違う。
「お兄さん、どうしたの?」
それでも彼女の不安そうな表情には嘘があるようには見えない。
僕と常識が違ったとしても、彼女はそれをなくして不安に思っている、一人で見つけられないと困っている。それだけは確かだと思った。
「いつから、身体がないの?」
「わかんない」
それ以外に聞くことを思いつかない。探すにしても手掛かりがなければ。
「じゃあ、今日ここに来るまでに行ったところをたどってみようか。それは覚えてる?」
彼女はパッと顔を明るくさせて大きく頷いた。
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