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真夜中の探し物
虚
「内部がからであること。また、そのさま。空洞。うろ。からっぽ。」
私は長雨の隙を見て差し込んだ一抹の晴天から帰って、纏わりつく湿度と気怠さを流し終え、微かな羽音が生む風の前でスマートフォンを覗いた。何を探すでもなく打った「虚」、内部が空っぽであること。あぁ、分かっている、知っているよ、なんて脳味噌の一皺が唸った。暗闇に光るスマートフォンが放つ閃光はカーテンの閉じた自室を賑やかに照らす。迸った光は私の身体を越え、掴もうにも掴めない。いや、掴もうとも思っていないのだけれど。この人工的な光と放たれるバッテリーの熱は、私が何かを探して見つけなければならないという焦燥を癒す気がした。探し物、どこにいったかな、そもそも、探し物は何だったっけ?窓をまたポツリ、ポツリと打ち始めたリズミカルな雨は、そんな大事で有ろうと思われる実態のない憂鬱を少しだけ愉快に踊らせる。
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