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窓が開いていた。
ぼくはその窓をがんばって閉じようと努力しようとしたのだけれど、どんなに閉めようとしてもね、その底なしのまっくろな夜空との境界をふさぐことはできなかったんだ。
別にそれが、ぼくの心の内と外を分けている扉だなんて、そんな比喩的なものではない。もちろん、現実に存在する窓扉でもないし、別世界に通じる魔法の扉というわけでもない。最後のは、一番近いかもしれないけれど。
とにかくその扉は、現実には存在しないものだけど、そのときのぼくにとっては、外からの風をさえぎるために絶対に閉じなければならない窓の扉だった。
「うーん、なかなか落とさないな。」
「攻略サイトを見たけれど、ドロップ率0.1%だってよ。もうあきらめたら?」
「もうちょっとがんばってみるよ。ぼくは寝なくても平気だからね。」
ぼくがそうボイスメッセージを残すと、彼は寂しさと悔しさの混じった表情を浮かべた。
「きみたちはいいな。私はね、やっぱり寝ないと疲れちゃうから。」
「ぼくは、ほんとはね。」
「なに?」
「ううん、なんでもない。」
ランキングを確認してみる。100位まではほぼぼくたちの仲間が名を連ねているようだ。もっとも、彼の仲間がユーザーネームをぼくらの仲間のものと似せたのかもしれないけれど。
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