(10)ダンスに疲れたら

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(10)ダンスに疲れたら

 エドワードが私を運んできたのは、パーティー会場から出て程近い部屋だった。  同じような部屋が何部屋も続いていたが、ノックをすることもなくその一つに入った。  部屋の中には長椅子と、小さなベッド。小机には飲み物や軽食が置いてあった。 「ここは自由に使っていい休憩室だよ。酒を飲み過ぎて体調を崩したりした人や、ウエストを締め過ぎたご令嬢が休んだり、ドレスを直したりするのに使う。ドアの前に青い薔薇が付いていただろう。あれを床に落としておけば使用中って意味なんだ」 「なるほど……、それで…みんなの前で、き…キスなんかして私を運んできたりして……、何か考えがあるんだよね?」  エドワードは説明しながら、やっと私を床に下ろしてくれた。心臓の音が激しく鳴っているのを悟られたくなくて急いで長椅子に座って距離をとった。 「ローヤル公は古い血だが子は皆結婚して首都にいる。ミゼルカは後妻で一般人の連れ子が二人いるはず。それを紹介しようと意気込んでいたのを見ただろう。アリサは聖下のお気に入りだと思われている。アリサの男にして神殿と繋がりを持ちたいのは見え見えだ。目眩しの魔法をかけていても、アリサの白魔力の匂いに誘われて虫が集まってくる。ああやって、古い血の俺がアリサに匂いを付けておけば、一般のヤツらは牙を折られたようなもので近寄っては来られない」 「あ…つまり、ミゼルカ夫人の子供を近づかせないようにした? ということ? 危険な人達なの?」 「ああ、あまりいい噂は聞かない。どうにかして関係を持とうとなんてされたら面倒だからな。逃げてくれた方が都合がいい。それに……これ以上ライバルが増えるのは困る、というのもある」  入り口のドアに背をもたれたまま、エドワードが妖しげに微笑むので、やっと落ち着いた心臓がまた騒ぎ出した。  落ち着くために、グラスに水を入れてゴクゴクと飲んだ。 「あの…そろそろ戻った方がいいんじゃないかな……」  この雰囲気が耐えられなくて、下を向きながらおずおずと申し出ると、どうして? という声が思いのほかすぐ近くから聞こえてきて、驚いて声を上げそうになった。  いつの間にか、エドワードは私のすぐ隣に優雅に腰を下ろしていた。 「休憩しようって宣言して来たんだから、すぐ戻ったらおかしいだろう?」 「え? ……じゃあ、本当に休憩するの? 大丈夫なのかな……」 「パーティーは長いんだし、他にも休んでいる人はいるから大丈夫。それより……」  エドワードの手が伸びて来て、長い指が私の頬をサラリと撫でた。 「さっきのキスの続きをしない?」 「っっつ!!」  先ほどからエドワードの濃厚な色香にくらくらとしていたが、これで完全に胸を掴まれて鼓動が止まらなくなった。 「こ…ここで?」 「うん」 「す…吸うの?」 「うん」  どんどん近づいて来たエドワードから逃げるように後ろに引いたつもりが、長椅子に倒れてしまい座面に背中がついた。  当然のようにのしかかって来たエドワードが私を見下ろすかたちになった。 「教えてよアリサ、誰にどこを吸われたの?」  言われたことの意味を噛み砕くまで、しばらくエドワードの緑の瞳を見つめてしまった。何を言われたのか頭に入って来たら、一気に顔が熱くなって火が出そうになった。 「ひどいなぁ。俺を最後に残すなんて…。でも知っている? 残ったものは一番美味しいという言葉があるんだ」  さてまずはここからと、エドワードは私の胸に触れた、光沢があり滑らかな触り心地のドレスだが繊細で薄い生地だった。下着を着ていたが、胸をほとんど覆っていないタイプで、こんな風に寝転んだら下にズレてしまった。布越しに胸を揉まれて、エドワードは突起を探り当てて擦り始めた。  むず痒い感覚が胸からじんわりと広がっていき、熱い息が漏れた。 「布越しでも分かるな。少し弄っただけでぷっくり立ち上がってきた。口に含んで舌で転がしてあげようか?」 「ぁ………い……だめ……ドレスが……」 「大丈夫、このドレスを選んだのは、ちゃんと考えがあるんだ」  エドワードが選んでくれた背中の開いたドレスだが、首の後ろの飾りで前が前の部分が止まるようになっていた。その飾りに手をかけたエドワードが、何やらもぞもぞと動かすとプチっと外れたような音がした。エドワードが引っ張るとスルリと前の落ちて全開になってしまった。  すでに下着からこぼれるように飛び出した白い胸が丸見えになってしまった。 「うわぁ! なっ…ななな……」 「こうやってすぐ愛せるようになっているんだ。いいデザインだろ?」  エドワードが嬉しそうに私の胸に顔を寄せて、小さな突起をペロリと舐めた。  いいデザインどころか、とんでもないデザインだ。 「もちろんこの留め具を取っていいのは俺だけ……、そしてこの柔らかい双丘を愛することができるのも……俺だけ」 「ふ……ぁ……んんっ……ん……ぁぁ…」  ペロペロと舐められたと思ったら、ズルズルと音を立てて吸われた。美貌の人に似つかわしくない卑猥な音が、目の前の光景と合わさって毒でしかない。  エドワードは私の身体中を丁寧に愛撫しながら、秘所へと手を這わせた。  そこはエドワードに触れられて、すっかり受け入れる準備ができていた。  あの長くて美しい指先に中をかき回されることを想像したら蜜口にきゅっと力が入った。  期待通りエドワードはゆっくりと指を入れて、中の具合を確かめるように動かしてきた。 「嬉しいな、アリサ。俺を待ってくれていたのか? とろとろになっている。直ぐにでも俺のを飲み込んでくれそうだ」 「うぅ…ぁ…だめ…汚れちゃ……」  愛液が溢れて下半身を濡らしているのが分かるほどだった。このままだとせっかくのドレスが汚れてしまう。 「アリサ…、ドレスというのは便利なんだ。こうやって上に持ち上げれば、ほら……アリサの可愛いお尻が丸見えだ」 「あっ…やだ……そんな……見ないで……」  うつ伏せにされて腰を高く持ち上げられた。ドレスを捲り上げられて、下半身が胸元の切り替えまで露わになってしまった。  エドワードは私の後ろに回って、秘所を弄りながらじっくり観察するように見ていた。 「どうしてだ? アリサはここも可愛いなと思って見ていたいのに……」 「嘘…! そ…そんなところ……やだやだ」 「指でかき回すと、中からどんどん溢れてくる。アリサは濡れやすいんだな。ほら、俺の袖口まで濡れてしまった」  信じられなくて息を呑んだ。あの洗練された美しい騎士服が私のアレで濡れてしまっている。  平気でそんなものを見せてくるエドワードにもクラクラして気が遠くなってしまう。 「だめ…大事な服が……」 「それなら……もう、アリサの中に入ってもいい? 待ちきれなくてこっちも破れてしまうかもしれない」  エドワードらしからぬ、変な冗談を言うので、目線を下半身に移すと、すでにズボンを押し上げている状態のものが目に入った。  まさか破れはしないだろうが、はち切れそうなくらいになっていた。 「え…あ……ええと……」  あまり魔力が溜まっているようには感じなかったが、あれをそのままにはしておかない気がして、私は促されるまま小さく頷いた。 場所をベッドの上に移して、汚れないようにドレス脱ぎ、ベッドにうつ伏せになって腰を持ち上げた姿勢になった。  エドワードがズボンを脱いで下着の中から現れたのは、パンパンに張り詰めたように大きくなっている欲望だった。  柔和で優しげな外見からは想像もできない太くて大きい存在感のあるもので、先が曲がっているように見えるのもまた卑猥な形だった。 「アリサ…待ちに待った瞬間だ…。ずっとこうしたかった」 「あ…あ……っっ」  秘所の入り口で愛液を塗りつけた後、エドワードはじっとりと中の具合を確かめるように後ろから挿入してきた。 「っっ…アリサ…、いいよ。熱くて吸い付いてくる…やばい…」 「な…なんか……なに……? んっあああんっ…」  他の人と比べるのもどうかと思うが、エドワードのそれは中に入ると蜜壁を掻き出すような独特な動きをして、それがビリビリと痺れるような快感を生み出してきた。 「妬けるなぁ…アリサ。誰と比べているんだ?」  耳の後ろでクスリと笑う気配がしたと思ったら、エドワードは浅く抜いてから、ぐっと奥まで押し込んできた。肌がぶつかるぱちんという音がして、私はたまらず大きく喘いだ。 「あ…あ…ん……はぁ……」  だんだんとリズミカルに腰を打ち付けながら、エドワードは古い血にもタイプがあると教えてくれた。 「ランスロットのような戦闘や強靭な肉体を作る方に特化した家系もあるが、うちは生殖能力に優れた家系なんだ。女性の中に入ると生殖器の先端が張って掻き出すような形に変化する。他の種を掻き出して自分の種を植え付ける、自分で言うのもなんだけど厄介な家系だよな」  エドワードが話してくれたのは異世界ならではの進化のようなものだった。男女が子を得るための祝福を得たとしても、エドワードの一族であればそこに割り込んで自分の種を植えることで、自分の子供にすげ替えることができるという、ある意味恐ろしい能力があるらしい。 「は…は…ぁ……はぁ……はぁ……っっ!!も…だ…め、あ………いっ!!んんん!!」  感じたことのない動きは蜜壁をこれでもかと、擦ってくるので私は耐えきれずにシーツを掴んで絶頂に腰を揺らして震えた。 「んっ…あり…さっ…っつ!!」  蜜口はエドワードのモノを搾り取るように収縮した。その動きにたまらないというように、エドワードはがんがんと腰を揺らしながら私の最奥で爆ぜた。膣内に熱い飛沫を受けて、目がチカチカとするくらい感じてしまった。 「……え…ど………エドワード」  達したことの余韻に浸るようにシーツに顔をうずめて息をしていたが、エドワードは私の中に存在感を残したままズルリと自身を引き抜いた後、何も言わず静かになってしまった。  どうしたのだろうと、首を回してエドワードを見ると、エドワードは顔を伏せて頭を押さえていた。 「だ…大丈夫? エドワード? 苦しいの?」  ランスロットに牙が出る時は、我を忘れそうになるくらい興奮した時だけで、射精をするよりも強い興奮と快感に頭がおかしくなりそうになると聞いた。  初めてそれを感じた時は、それに飲み込まれて自分を失ってしまいそうで恐ろしくなるのだとも……。  もしかしたら、エドワードもそんな状態なのかもしれない。  それは吸血することでしか満たされない強い渇き、許されることで満たされるもの。 「エドワード」  私が名前を呼ぶと、エドワードはゆっくりと顔に当てた手を離した。垂れた前髪の向こうにある双眼は、燃えるような色に変わっていた。  荒い息に肩は揺れて、口元からは長い牙が出て端から涎を垂らしていた。 「……欲しいの?」 「ほし……い……血が……あり…さ…」  今にも食らいつきそうに全身を震わせているが、きっと最後の気持ちで私をひどく傷つけたくないと踏ん張っているのだろう。  そんな姿が無性に愛おしく感じて私はエドワードに抱きついた。 「食べていいよ。全部………エドワードのものに……」  唸るような咆哮。  鋭い牙が肌に当たる感覚。  全てが私の心を突き動かした。 「きて…エドワード」  息を強く吸い込む音が聞こえた後、肩にグサリと鋭い牙が食い込んた。  痛みは一瞬、あとは快楽物質でも脳内に出ているかのように快感しか感じない。 「あ…あ…ああああ……」  もうまともに喋ることなどできなかった。  飢えた獣に食らいつかれて全て吸いつくされる。  発光した白魔力がどくどくと流れ出して、エドワードの体に吸い込まれていくのが分かる。  この快感の果てに何があるのだろう。  大きな波もいつかは引いていく。  こんなに温かく包んでくれる手を私はいつか離すことができるのか、そんな事を思いながら逞しい背中にしがみついたのだった。  □□□
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