13人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
「イエーイ! 丸ちゃん、私、歌っちゃうよ?」
薄暗い室内に、マイクを持った広橋由佳の甲高い声が反響する。
「歌ってくれよ……密室殺人事件も氷解させるかのような、由佳の美しい歌声を聴かせてくれよ」
桃山丸夫は、ダックスフンドがプリントされたソファーに背中を沈めながら、よく分からないたとえを持ち出す。
メロンソーダの入ったグラスも、困惑気味に、氷を浮かび上がらせる。
じめじめとした土曜日の午後。一ヶ月ぶりにお互いの休みが重なったため、丸夫は、付き合って三年になる恋人の由佳を誘い、カラオケボックスにやって来た。
最初のコメントを投稿しよう!