縁結びのカラオケボックス

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「イエーイ! 丸ちゃん、私、歌っちゃうよ?」  薄暗い室内に、マイクを持った広橋(ひろはし)由佳(ゆか)の甲高い声が反響する。 「歌ってくれよ……密室殺人事件も氷解させるかのような、由佳の美しい歌声を聴かせてくれよ」  桃山(ももやま)丸夫(まるお)は、ダックスフンドがプリントされたソファーに背中を沈めながら、よく分からないたとえを持ち出す。  メロンソーダの入ったグラスも、困惑気味に、氷を浮かび上がらせる。  じめじめとした土曜日の午後。一ヶ月ぶりにお互いの休みが重なったため、丸夫は、付き合って三年になる恋人の由佳を誘い、カラオケボックスにやって来た。
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