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「丸ちゃん歌わないの?」
マイクを差し出しながら、舌をぺろりと出す由佳。三十五歳の女性が行う仕草としては痛々しい。
「ちょっと喉の調子がね……」
わざとらしくゴホゴホと咳をしながら、口に手を当てる丸夫。
「そうなんだ……あっ! 私、喉がよくなるいい物持ってるよ! あげるね!」
そう言い、トウモロコシ形のポーチを開け、中を探り始める由佳。
「うーん……あれれ……あ、あった!」
小瓶に詰められた豆板醤を取り出しながら、ピースサインを決める由佳。
「余計に喉の調子が悪くなるよ……はっはっは!」
由佳のクリティカルジョークを、アメコミに登場するダディのような大らかな笑いで受け入れる丸夫。
「そうなの? 私、風邪の時はいつも豆板醤を一気飲みしてるんだけどなぁ……」
真顔で発した由佳の言葉に、笑顔のまま動きを止める丸夫。
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