縁結びのカラオケボックス

8/26
前へ
/26ページ
次へ
「丸ちゃん……これ……」  床に落ちた指輪を指差し、首を傾げる由佳。 「いや……その……」  のそっと立ちあがり、呪われた熊のように、挙動不審に辺りを歩き回る丸夫。 「その……えーーい!」  突然、死を覚悟した僧兵の如き表情を見せ、由佳に向き直る丸夫。しかし、由佳は指輪を見つめたまま。僧兵の熱い瞳など、感じる気もない。 「その……由佳、俺とけっこ」 「凄いね。こんなのど飴があったんだ! 美味しそうだなぁ……舐めてみたいなぁ……」  丸夫の覚悟を美しく遮った由佳。食いしん坊な力士のような表情を浮かべ、意地汚なく床へと這いくばる。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加