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「本当にここ入るの~?」
「折角ここまできたんだからさ、入ろうよ、ね、ね」
「僕お腹すいたんだけど」
「引き返すよりトンネル抜けた方がヒルズに近いよ」
お腹はすいてた。30分くらいでトンネル抜けてヒルズで昼飯食って解散の予定だったけどもう2時過ぎ。ヒルズの南は崖地で来た道を戻るより、トンネル抜けた先にあるヒルズ北入口から登るほうが飲食店は近い。
「飯より崩落したら出られないぞ」
「ええとでもせっかくだしちょっとだけ、ね。トンネルそのまま抜けてぐるっと反対側に回ってヒルズでうまいもん食って帰る。それでいこう、ね」
男子の本懐は冒険である。昼飯分痩せても我慢するのである。こういうのって来たら入らざるを得ないじゃん。本能的に。
それに目標はトンネルだけど、辻切ヒルズは美味い飯屋が多いと聞いたのだ。それはそれで気になっていた。ほら、俺に彼女ができた時にデートとかするときに、ええと。ちょっと高いらしいけど。
「外より中のほうがまだましか。仕方ないな。万一日没までに応答がなければ警察に連絡するよう彼女にメッセいれとく」
「えっ警察はまずくない?」
「ここで生き埋めよりマシだ。それに今日ならまだ春休み前、だろ」
ぐう。仕方がない。
でも気を取り直して気持ち震える足を一歩踏み出すと膝がカクリと鳴った。
そういえば、と時透さんとの約束を思い出して入り口をパシャリと写メる。なんかファインダー越しでもおどろおどろしいな。
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