詩「きみの音」

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自転車の補助輪で 地面をがりがりと削るように 巨大な世界を描くあなたは どうしてこんなにも優しいのだろうか 美しいものは人を狂わせる 優しさは狂人を綻ばせる 雨のような涙 と 涙のような雨 愛おしいこの世界で 落書きのような 雲と光 閃光 残光 その下で あなたはまた色を重ねる 呼吸音が聞こえる ぼくの呼吸と ぼく以外の呼吸の音 心臓が動く音 木の擦れる音 太陽が昇る音 きみが遠くへ行ってしまう音 空の音 土の音 影の音 すべては摩擦     生きる音       死する音         きみの音 優しい音が聞こえる その音が愛おしくて
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