第1章 新年度(高校2年)

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第1章 新年度(高校2年)

今日から高校生活の2年目が始まる。 この1年間は莉乃の骨髄移植から始まり、夏の東京大会、そして春の甲子園。高校に入った時は「甲子園に行くぞ」と口では言っていたが半信半疑であった。 小学生の時に語った「甲子園で優勝して日本一の投手になる」夢が着実に近くづいている。 しかし、甲子園と言う舞台には立てたものの、レベルの高さも痛感した1年であった。 地区予選も激戦区で、強豪校が心城学園のマークが厳しくなる。 いつもの様に耕太と奈緒と待ち合わせをして学校へと向かう。 甲子園で耕太と喧嘩をしたが、今ではいつも通りの耕太である。 あの時は何であそこまで僕の事を怒っていたのか、結局は聞けていない。でもいつもの耕太に戻ってくれたので、別に聞く必要もない。 珍しく僕が待ち合わせ場所に一番乗りだった。 「あら?珍しい。勝利がいる」 奈緒が僕を見るなり皮肉った。 「うるせえ」 いつもの様に答える。奈緒には男友達と同じ様に話せる。 これが幼馴染ならではの距離なのだろう。 「おう、勝利が居るなんて珍しいな」 続いて耕太がやってきた。 「奈緒と同じことを言うなよ」 そんな平穏な雰囲気を交わしながら学校へと向かう。 「それより、今日から新入部員の受付だろ?」 耕太が奈緒に話し掛ける。 「うん。今年は多いかもね」 「あれ?そう言えば俺達みたいな推薦入部は無かったのかな?」 「勝利は今更なにを言っているのよ。夏の予選で上位に食い込めなかったから、昨年は推薦入学を取らないって言ってたでしょ?」 「えっ、そうだっけ?」 「本当に勝利は自分以外の事は気にしないんだから」 奈緒の言葉に耕太は相槌しながら「しょうがねえよ。勝利だから」 「そうね、勝利だからね」 二人は笑った。 「何だよお前達は、まるで俺が自分勝手な人間みたいな言い方して!」 「そう怒るな。でも秋の東京大会を制した事を知ってから心城学園を選ぶ生徒は多いかもな」 「そうね。マネーシャーも入ってくれるかな?」 「そうだな一人だと大変だもんな。今日の受付も奈緒がやるんだろ?大変だったら手伝うからな」 「耕太、ありがとう。」 奈緒がこっちを見た。 僕はそっぽを向く。 「勝利は手伝ってくれないの?」 「俺は自分勝手だから手伝わないよ」 「相変わらず勝利は最低ね。莉乃ちゃんに言っちゃおう」 「バカ!莉乃は関係ないだろ!」 3人が笑う。 学校に着くと色んな生徒が挨拶をしてくれる。まさしく甲子園効果なのだろう。 知らない人と接するのが苦手な僕には、あまり好ましくない状況である。特に女性から話し掛けられるのは苦手で、ただ愛想笑いを浮かべる。 2年になって、僕達3人は別のクラスになってしまった。 クラスでも僕の廻りに生徒が集まり野球の話が始まる。今は1学期が始まったばかりで甲子園の話題が多いが、そのうち飽きてくるだろう。 面白い事に普通の友達がいつの間にか親友だと言ってくる。別に否定はしないが、「本当の親友は君達では無いぞ」と言いたい。 そういえば1年の時も同じような事があったが、確か奈緒が適当にあしらってくれていた。 「勝利!」 奈緒の声だ。 いつの間にか僕の後ろに居る。 「ねえ、昼休みに受付の準備をするから、部室前に来てね。耕太も連れてきてよ、分かった?」 「えっ嫌だよ」 「これは本田キャプテンの命令よ。ちゃんと伝えてね」 「何で俺が・・・」 既に走り去って行く。 「相変わらず飯嶋さんには弱いんだな」 周りの生徒から冷やかされる。
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