三毛猫は彼氏を見ている

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加恋には現在付き合っている彼氏がいる。 だがそんな彼氏の空智に少々不満があり、彼の親友である健斗(ケント)に電話していた。  いわゆる恋愛相談で、空智が自分に対して積極的になっていないことが悩みだった。  『そっか、それは辛いな。・・・それで?』 「本当はもっと手を繋ぎたいし、キスとかもしたいの!」 『うん』 「でもまだ『グイグイ距離を詰めて加恋を怖がらせたくないから』とか言って、積極的になってくれないんだよ! どうしたらいいと思う?」 健斗は親身になって話を聞いてくれ、空智に詳しいためアドバイスもよくしてくれる。 だから空智関連で何かあった時はいつも健斗を頼りにしていた。   『付き合ってからもう半年は経つんだっけ?』 「そう! お泊りもまだ一回もしたことがないの!」 『そうかぁ。 でも心当たりがないんだよなぁ・・・』 「私が初めての彼女じゃないんだよね?」 『あぁ』 「だから彼女慣れしていないとかは、なさそうなんだけど・・・」 彼氏として積極的でないだけで、それ以外にはあまり不満はない。 デートでも率先して予定を立ててくれるし、エスコートもしてくれる。  だからこそもっと深い関係になりたいと思うのだが、なかなか進展しないのだ。 健斗も話を聞いて考えていたようだったが、導き出した答えは加恋の予想外なものだった。 『そうだ。 よく当たるっていう占い師を紹介してやろうか?』 「占い師?」 『そう。 その人に相談をしたら的確なアドバイスがもらえると思うよ』 「占い、か・・・。 あまり信じないタイプなんだけどなぁ」 『俺も占いは信じない派。 でも前にダチに勧められて行ったら、マジで当たったんだよ』 「へぇ・・・。 じゃあ駄目元で行ってみようかな」 勧めてきたのは空智も信頼している親友の健斗なのだ。 だから信じてみることにした。 それに聞いてみた感じそれ程お金がかかるというわけでもないし、駄目元で行ってみてもいいかと思った。 「ありがとう! 早速行ってみるね!」 電話を切った後、早速教えてもらった占い師のところへと向かった。 「お邪魔します・・・」 「いらっしゃい」 「私の恋愛を占ってほしくて」 「どうぞ腰をおかけになってください」 占い師の顔は見えないが背は高くほっそりとした人だった。 黒いフードを深く被っている。 ―――占い師っておばあちゃんのイメージだったけど、この人は若いんだ・・・。 「ここに氏名と生年月日を書いてください」 早速氏名と生年月日を書き占ってもらった。 「・・・なるほど。 このままだと二人の将来はありませんね」 「嘘ぉ!?」 「貴女には彼氏に対して不満に思っていることがあるでしょう?」 「え・・・」 「その不満が募っていき、徐々に二人の仲がこじれていきます」 詳しいことは何も話していないというのに言い当てられていた。 それだけで加恋は占い師のことを信じてしまった。 「そうなんですよ! 実は・・・」 占い師に全てを相談した。 話を聞くのもプロの仕事のうちなのだろう。 相槌や同情もしてくれ非常に話しやすかった。 「それは辛いですね。 相当お困りでしょう」 「はい・・・。 もしこの不満がなくなったら私たちの関係は続きますか?」 「そうですね。 お互いに我慢をしないことが一番ですので」 「そうですか・・・。 でも、どうしたらいいのか分からなくて」 「貴女が今一番望むことは何ですか?」 「私が一番望むこと・・・?」 「はい。 できるだけサポートをしたいので是非教えてください」  そこでパッと思い付いたことを言った。 「あ! 彼氏のペットになりたいです!」 そう言うと占い師は流石に僅かな時間固まった。 だがプロとしてそのくらい慣れているのか、すぐにやり取りを再開する。 「・・・ペット、ですか?」 「はい!」 占い師は少しばかり困っている様子だ。 だが加恋としては当たる占い師がどんな答えを出すのか気になって仕方がなかった。   「そう、ですか・・・。 分かりました。 では、この秘密のお薬を差し上げます」 「お薬?」 占い師から青い小さな瓶を受け取った。 「何ですか、これ?」 「この中身を飲んで今日は眠ってください。 飲み始めてから12時間効果が続きます」 「ありがとうございます・・・?」 詳しくは話されなかったが、言われた通りに加恋は昨日の夜寝る前にその薬を飲んだのだった。
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