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第2夜
久し振りに娘が孫娘と一緒にやってきた。私75才、妻73才。別居独立している娘は若菜45才、孫娘の麗は20才である。私と妻は年金とアルバイトで細々と生活。娘は夫と離婚したバツイチの母子家庭で孫娘を育ててきて、営業の仕事で忙しく、家を空けることが頻繁だと言う。
娘が母と話している。
娘「お父さん、浮気しているよ」
私「ふん、馬鹿なことを言うな。この齢で何ができる」
娘「へぇ。コンドーム持ち歩いているじゃないの」
妻「またぁ。相手はコンドームが必要な若い子なの?」
会社員時代、毎週、大阪へ出張を繰り返している頃に、バッグの中に入れていたのを見つけられたことがある。あの時の女遊びなど誰にも言えない。その時は、「外で何があるか判らないから備えているだけだ。使ってはいない」と言い繕った。
私「俺なんかのジジイが、今さら女の子から相手にされる訳がない」
妻「怒っている訳じゃないわ。ほんとのことを知りたいだけよ」
疑うのも無理はないが、ほんとのことなど言える訳がない。妻は既に閉経しているが、私はまだ現役である。老いても性欲は衰えない。若い子を抱きたいと思っているのも事実ではあるが、その機会に恵まれてはいない。
私、娘に聞く。「なんで知ってる?」
娘「この前、スマホの使い方を聞きに来た時よ。上着のポケットに入れてた」
私「今じゃ、常識だろうが」
妻「何よ。家では使ったことないのに」
私「用意するのは妻の役割だよ。私の母親はセールスマンから買って備えていたらしい」
妻「何十年前の話よ」
私「今では、ドラッグやコンビニで簡単に買えるらしいけどね」
と、とぼける。
妻「あなたのお母さんは卑らしい。『息子、上手いだろう』と言った。『お父さんは上手かったよ』。返す言葉がなかったわ」
私「何でそんな話になる。田舎の女たちは猥談もオープンだよ」
私の母親は20年前に亡くなっているので、妻との新婚時代の古い話だ。
私は相変わらずスマホの使い方が判らない。普段使っているのはガラケーとガラホだ。私のガラホは折りたたみの3枚構造になっていて、液晶画面と操作ボタンが各面に付いている。HPと動画、テレビ受信とカメラ、メールと電話番号表示が同時に使える。アプリは必要ないが、その分、扱いが面倒である。
バカ話の途中で電話が入ったが出れなかった。仕事先の人かららしいが返信の方法に手間取っている。電話番号が判らず、何度押してもエラーとなってつながらず、私の世界ではいつもイライラする。異世界との通信は電波状況が不安定であるらしい。
相手の電話番号を探す。年賀状に書いてあったことを思い出し、机の引き出しを探すがない。テーブルの下に数枚落ちているのを見つけた。娘が先に年賀状の束を見ている。孫娘が中学生の頃までは同居していたので、娘宛ての年賀状も一緒になっている。
娘「あった。これだわ」
私の知らない相手からの年賀状だ。住所を知りたかったらしい。
私「どういう相手だ?」
娘「出張先で知り会った人よ」
私「お前も浮気か?」
元夫とは正式に離婚しているから浮気とは言えないが、地方都市への連泊が多いという女の営業マンなど出張先で何をしているか怪しい。
孫「知ってるよ。家にも来たことある」
娘「余計なこと言うんじゃないよ」
孫は元の父親との出来婚で生まれた。私はしぶしぶ結婚を承諾したが、5年ぐらいで別れ、しばらく母子が家に居候していた。孫娘の話では、私らと別居してから何人かの男を家に招いていたらしい。
娘「麗に初めての彼氏ができたらしいよ」
自分の立場が拙くなったのか、話題を変えてきた。孫の麗は美人とは言えないが、髪の毛を赤く染めて、それなりに今風のギャルを装っている。私からすれば普通とは言えない。
私「どこの誰だ?まともな男か?」
孫「アルバイトでの先輩の人」
私「何のアルバイトしている?写真を見せなさい」
孫「嫌よ。私はもう大人よ」
なんだ?もうヤラれてしまったのか? 風潮とは言え、可愛い孫娘とヤル男は許せない。
私「誰を好きになろうが自由だが、子どもだけは作るなよ」
娘「お父さんのコンドームをあげれば」と、声を上げて笑う。
妻が何枚かの写真を持って来た。私に似ている人を集めたと言う。
私「どれも似ていないよ」
福禄寿のような長い頭の人物。ユルキャラの被り物を被った男。髭面の熊男・・・。ハロウィンの仮装ではないか。
私「なんでこんな写真を集めた?」
妻「元PTAのカメラマンから、面白いからもらったのよ」
私「嘘をつくな。浮気の相手だろうが」
写真の中に1枚の領収書があった。「Bar HOTEL」名である。
娘「バーで待ち合わせして、そのまま部屋に入るというホテルよ」
妻「ここにあったのね。家計簿と現金が合わないと思った」
私「とぼけるな、この浮気女」
所詮、男と女だ。出会えばすることは一つしかない。既婚・未婚に拘わらず、貞操観念というものは男女共に消えて、年代を問わず自由に交わることが普通となった。もう少し若ければ、この世界でもっと楽しめただろうに。
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