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1.森の魔物
村のはずれにあるこの森は、お気に入りの勉強場所だった。
村人が誰も近寄らない、静かな場所だ。
僕は木板に、石で文字を書きつけ、勘定の練習をしていた。
それが終わったら、先生に貸してもらった書物をめくる。
一字一句を、頭に叩き込む。
次の試験に出るのが、どこなのか。
問題にしやすいのは……。
首をひねりながら書物を眺めていると、不意に大きな影が、僕の上に落ちてきた。
すっと、書物を支えていた両腕が、軽くなる。
きっと、勉強を邪魔にしに来た大人たちだ。
賢い子供が嫌いな大人は、しょっちゅう僕らの邪魔をする。
「勉強ばかりしてないで、たまには外で遊びなさい」
「勉強しろ」と言うのと同じ口で、偉そうにのたまう。
こんなところまで、邪魔しに来たのか。
苛立ち混じりに、僕は立ち上がった。
「おい、ふざけるなよ」
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