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僕は、先生に習ったことを思い出す。
動きが遅くて、鳴き声はうるさい。
自分で食物を、ろくに捕まえようとしない。
”幸福な労働”とは、対極にいる動物だ。
苦々しい顔で、先生は語っていた。
大きさは、せいぜい子供の背丈くらい、と聞いていたが……目の前にいるのは、僕なんてぺろっと食べれてしまいそうなほど、大きなな獣だった。
背中に3本も、大木が生えている。
さながら、動く丘だ。
巨大なナマケモノは、僕から取り上げた書物を、爪の先でちょいちょい、とめくっている。
「やっぱり面白いよ。ヒトのすごいところは、こうやって知識をまとめて残すところだね。マメなもんだよ」
喋った。
男とも女ともいえない、低い声音だった。
僕は歯の根が噛み合わず、視線は釘付けになり、震える足を抑えるだけで、精一杯だった。
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