1.森の魔物

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もし、この獣が気まぐれを起こしたら。 大きな爪で切り裂かれて、潰されて、あっという間に今日のおやつにされてしまう……。 「君は退屈そうだ。もったいないよ、こんな面白い書物を持っているのに。楽しくないの?」 口の中がからからになって、声が出ない。 ナマケモノは、のんびりと僕を眺めたあと、「ふっ」と笑った。 獣の顔でも、笑われたのがわかった。 「取って食ったりしないよ。私はこの通り、ノロマなんだ。君をつかまえようにも、とうてい追いつけやしないよ」 大きなあくびを吐き出し、口をむにゃむにゃと動かす。 「驚かせて、ごめんね」 書物を僕の足元に丁寧に返すと、そのまま爪を自分の背中に回す。 背中から生えた立派な広葉樹から、鮮やかな橙色の果実をつまんで、ひょいっと口に放りこんだ。 「私は、こいつしか食べないよ。君も食べる?」
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