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立ちすくむ僕の前に、僕の背丈ほどもある、大きな爪が伸ばされる。
つまんでいたように見えた橙色の木の実は、僕が受け取ると、両手でも余りあるほど大きな果実だった。
僕はナマケモノと、橙色の実を見比べた。
両手が、ずっしりと重い。
冷や汗が、だらだらと額を伝う。
「あれ、食べないの?」
不思議そうに、ゆっくり、ゆっくりと、ナマケモノは首をかしげた。
かしげた首が、少しだけ村の方角に伸びる。
目を細めたナマケモノは、僕に背を向け、いそいそと森に潜り始めた。
「いやなニオイ、いやな気配だ。それ、おいしいよ。あげる。またね、少年」
ナマケモノが立ち去る、ガサガサという音を聞きながら。
僕は、橙色の果実に、ぼんやりかぶりついた。
ちょっと渋い。
けど、甘い。
種が大きい。
「トルア、無事だな?」
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