1.森の魔物

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立ちすくむ僕の前に、僕の背丈ほどもある、大きな爪が伸ばされる。 つまんでいたように見えた橙色の木の実は、僕が受け取ると、両手でも余りあるほど大きな果実だった。 僕はナマケモノと、橙色の実を見比べた。 両手が、ずっしりと重い。 冷や汗が、だらだらと額を伝う。 「あれ、食べないの?」 不思議そうに、ゆっくり、ゆっくりと、ナマケモノは首をかしげた。 かしげた首が、少しだけ村の方角に伸びる。 目を細めたナマケモノは、僕に背を向け、いそいそと森に潜り始めた。 「いやなニオイ、いやな気配だ。それ、おいしいよ。あげる。またね、少年」 ナマケモノが立ち去る、ガサガサという音を聞きながら。 僕は、橙色の果実に、ぼんやりかぶりついた。 ちょっと渋い。 けど、甘い。 種が大きい。 「トルア、無事だな?」
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