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「…お前さ、自分の立場分かってんの?」
震えた声で、元基は言った。
「え?」
その元基の表情は、私が知っている彼ではなかった。
「たしかに俺は、仕事もちゃんと定まっていないクソ野郎だよ。でもさ、お前…なんか勘違いしてね?バツ2で子持ち、おまけに家事も全然できないお前をこうして支えてやってるの、誰だと思ってんだよ?!」
「…っ…」
私は驚きのあまり、返す言葉が何も浮かんでこなかった。
「お前が大好きな一人旅を自由にできるのは、俺が梓の面倒見てやってるからだろ?感謝しろよ!」
この人は…誰?
…なにこいつ、なにこいつ、なにこいつ。
「…」
「お前、ちょっと美人だからって、あんま調子乗んじゃねぇぞ」
私はなぜか、幽体離脱をしているような気分になった。
夫に酷い言葉を浴びせられている自分を、もう一人の自分がどこかから客観的に見ているような感じ。
自分の事なのに、他人事のような。
あぁ。私って、なんでこうも男運が悪いんだろう。
心の中で、私は笑った。
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