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涙なんて出なかった。
どちらかと言えばとても清正していた。
悲しくも寂しくもなかった。
ただ一つ。あぁやっぱり、と思った。
「ママ、パパはもう戻ってこないの?」
私と手を繋いだ小さな梓が、純粋な目で私に聞いた。
「あんな人、パパじゃないよ!」
「うーん。じゃ、前のパパは?」
「前のパパもパパじゃない!梓にはママがいる。だから大丈夫!」
こんな私は、母親失格だろうか。
「そっか。ママ大好き!」
それでも私は、今日も梓が可愛くてたまらない。
この子への愛だけは、紛れもなく真実で確かなものだった。
そんな梓の屈託のない笑顔を見て、私は思った。
この子だけは絶対に幸せにすると。
気分屋で、バカで、すぐに結婚してすぐに離婚しちゃうダメなママでごめんね。
少し頭が悪くて不器用で、変人なだけなの。だから許してね。
いつか梓が大きくなった頃、この子は私を軽蔑するだろうか。
そんな不安もあるけど、それでも私は今日も梓と共に生きていく。
私はきっとこれからも、まともになんて生きられそうにない。
そもそもまともに生きようとすること自体、間違っている気がする。
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