愛する人へ

2/13
前へ
/13ページ
次へ
祐奈は、長野県から東京の私大へ進学し、卒業後、大手通販サイト「ファステスト」に入社し、事務職として25歳になっていた。 ある日、会社の商品を扱う大手物流会社「青葉運輸」に瑕疵があったのだろうか、背広姿の営業マンがファステストを訪れて、ひたすら頭を下げて陳謝している姿があった。身長は180センチくらいの高身長で、歳は30歳くらいだろうか。メガネが知的な雰囲気の誠実で真面目そうな男だなあというのが祐奈の浩一郎の印象であった。 運命の日は、今から半年ほど前のことだった。 昼休みにコンビニに行った祐奈がジュースの棚で立ち止まっていたところ、 「こんにちは、ファステスト様の総務の方ですよね」 「そ、そうですが」 「私はお世話になっている青葉運輸のエリア統括マネージャー、古田浩一郎です」 「ど、どうも。上杉です」 「あのー、よかったら、この当たりの洋食屋でお昼、ご一緒しません? 僕1人で寂しく食べるとこだったので」 祐奈は浩一郎の白い歯が輝くスマイルに2つ返事で了承したのだ。 これ以来、祐奈は、毎週、浩一郎と昼食を共にした。 話してみると、映画鑑賞が趣味であったり、最新の漫画本で話は盛り上がった。 「僕、祐奈さんと昼食がとれる日は朝からは胸がワクワクするんです。祐奈さんの顔が見れると心が落ち着きます」 「まあ、嬉しい。私もなんです」  
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

54人が本棚に入れています
本棚に追加