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秋になった。
祐奈は順風満帆に浩一郎との愛を深めていた。
10月の祐奈の誕生日、2人は都心の高級ホテルに宿泊した。
「誕生日おめでとう」浩一郎と祐奈はワインで乾杯をした。
最上階のレストランからは東京の夜景が一望できる。
「祐奈、週末に会うだけというものも寂しいなあ、早く2人で一緒に生活したいんだ。マンションでも買わないか?」
「浩一郎さん、私、プロポーズの返事もしていなくて」
「そうだったね。じゃあ改めて、君を幸せにします。僕と結婚してください」
「は、はい。よろしくお願いします」
「じゃあこの指輪、受け取ってくれる?」大粒のダイヤが煌いて眩しかった。
「はい。嬉しい!」
「よかった。実は、僕は君に好きな人がいるんじゃないかって心配していた。プロポーズを保留にされたから、君の中に誰か忘れられない人がいるんじゃないかって」
「不安にさせてしまってごめんなさい。私の中で、結婚という気持ちの整理がついたからなの。私には浩一郎さんじゃもったいないんじゃないかって」
「祐奈、君はいつも、自分にはもったいないと言う。僕にとっては君のその言葉は、僕から逃げる口実みたいに聞こえるんだ。もっと自分に自信を持って欲しい。僕にとっては祐奈は宝物なんだ。『私にはもったいない』というのは禁句にしよう」
「は、はい」
「で、早速なんだが、僕は君の親御さんにご挨拶に伺いたい。11月の連休を利用して長野に行くのはどうだろう?」
「11月?」
「ああ、早いほうがいいし、終わったら僕の実家にも来て欲しい」
「わかりました」
「春に結婚式を迎えたら、ハワイでどうだろう? 新婚旅行」
「まあ、素敵」
「で、旅行から帰って家がないと困るよね。だからこの際、マイホームは先に確保したいと思っているんだ」
「どんなお家がいいの?」
「うーん、できればオフィスに近いタワーマンションが僕の希望かな。高い眺望って昔から憧れていたんだよね」
「ふうん・・・」祐奈は夢見心地である。
「どうした? 祐奈はタワマンは嫌い?」
「嫌いだなんて。ただ私、実家がずっと戸建てだったからタワーマンションのイメージが湧かなくて
「ハハ、この近辺で戸建ての一軒家なんて建てたら数億になっちゃうよ」
「2LDKで7000万くらいでいいのが出ているんだ」
「私は結婚しても働いたほうがいいのかな」
「祐奈に任せる。そのうち子供ができることも想定して、祐奈の選択を優先するよ」
「ありがとう・・・」祐奈は浩一郎の優しさに感謝した。
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