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その夜、2人はホテルの部屋に戻り、浩一郎は部屋の風呂に入っていた。
祐奈の携帯が鳴る。
翔太からの電話だった。
「どうしたの」
「ゴメン、俺、祐奈に自分から電話しちゃった」
「なにかあったの?」
「もう農業ができなくなったんだよ」
「え? どういうこと?」
「大変だ。ウチラの住んでいる下愛郷の岡部地区を、大手運輸会社「青葉運輸」が物流拠点として大きな配送基地を作るらしい。ウチも祐奈の家も土地を買収するらしい。基地の電力全ては太陽光発電で賄うらしくってウチの農地や田んぼも高く買い上げられるらしい。実家から連絡はいってないか?」
「来てないよ、そんな話初めて聞いた。つまりどうなるってこと?」
「大金を貰ってどこかへ移転しなくちゃいけないってことさ」
「翔太の家の畑や田んぼはどうなるの」
「農業は廃業ってことさ。ぜんぶ埋め立てられて工業団地になる」
「ええ、そんなことオジサンもオバサンも承諾したの?」
「ああ、金が入るんだよ。もう農業をやらなくてもいいくらいの金が」
「信じられない・・・」祐奈は絶句した。
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