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「行ってくるね」上杉祐奈は東京駅の新幹線改札口で立ち止まる。
「僕も挨拶に行きたいな」古田浩一郎は惜しむような声を出す。
「ごめんね。お盆はバタバタしてるし、日時を改めて」祐奈はゴメンと手を合わせた。
「電車のドアまで見送るよ」
「やだあ。ドラマのお別れシーンじゃないんだから、ホント、ごめんね」
「木曜には帰るよな?」
「うん。向こうからRINEするから」祐奈はそう言って手を振った。
「待ってるから」
「うん」祐奈は腰元で親指を立てた。そして改札を抜けていった。
祐奈は、車内で荷物を上に収め、窓ぎわに座ると大きく息をした。
(なんだろう? この開放感と罪悪感は)
徐にバッグからペットボトルのお茶を口に含んだ。
(結婚かーあたしなんかに浩一郎さんはもったいない)と謙虚に思う一方で、
(あいつのことがどうも放っておけない)という本音も存在する。
(もう、どうしたらいいんだろう、結婚て何??)
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