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やり取りを聞きながら、影斗は改めて目の前の二人を見比べた。
正直なところ、蒼矢と烈には背格好も顔の造形も、言ってしまえば中身もおそらく類似点が無いように思える。同じ学校に通っている同級生と仮定すれば、間違いなく別々の友人グループだっただろう。
それが、"幼馴染"という関係で括れば全ての不合理が解決する。
とはいえ、これほどタイプの違う者同士が10年も関係を続けているとなれば、それはもう幼馴染という枠でもおさまりきらないのではないだろうか。
影斗は素直に感心していた。
「そっか、蒼矢の学校の先輩だったのかー…」
烈は再び、影斗をまじまじと眺める。
「そうだよ。この前会った時も制服着てたじゃん」
「いやー、まぁ言われてみれば…そうだよな。なんかさ、エイトが着崩し過ぎててわかんなかったわ!」
「…あぁー…」
他意無しにあっけらかんと言ってのけた烈だったが、横から蒼矢の冷ややかな視線が刺さる影斗は、明後日の方へ目を向けた。
「っと…俺、これ渡しに来たんだった」
烈は蒼矢の手に、持っていた小鉢を載せる。
「これ、母ちゃんから。今日の晩飯にって」
「…ありがとう」
「ちゃんと食えよ? あと、あんまり無理すんなよ、お前気管支も弱いんだから」
紅ら顔を隠すようにうつむきながら小さく頷く蒼矢を見て、烈はニッと笑う。
「じゃ、長居しちゃ悪いから! またなー」
「! あ、烈待った」
そう言いつつドアを開けて出ていこうとする烈を、影斗が呼び止める。
「お前んちここから近いってどのへん?」
「そこの交差点渡ってすぐだよ」
「じゃさ、家から卵一個もらって来れねぇ? あればコンソメも」
「?? わかった、ちょっと見てくる!」
軽快に駆け出していく烈を見送り、不思議そうな顔で見上げてくる蒼矢に、影斗は歯を見せながら悪戯っぽく笑った。
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