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第9話_外界へのいざない
蒼矢が体調を崩してから週が明け、影斗はいつも通り構内のあまり人目につかないポイントで蒼矢の到着を待ち、いつも通り少し早い時間に登校してきた蒼矢を迎える。
「よう」
「おはようございます」
「調子どうだ?」
「はい、もう大丈夫です。…先週は先輩には本当にお世話になりました」
「いーっていーって。治ってよかったな」
綺麗な所作でお辞儀する蒼矢に気恥ずかしげに手を振ってみせ、周囲を確認した影斗はそのまま蒼矢の隣を歩き始める。
「具合悪くなったら我慢すんなよ、お前結構無理するタイプだろ」
「…気をつけます」
「あ、あとさ…気管支弱いってこの前烈言ってたけど」
「ああ、はい…体調崩すと咳き込みやすくて」
「そっか」
影斗は今後、蒼矢の前では絶対煙草を吸わないと心に決めた。
「じゃ、こっから本題なんだけど。今日放課後ヒマ?」
「? 今日…ですか?」
「そー。二人で遊びに行こうぜ。行先はもう決まってっから、あとはお前だけ!」
突然のお誘いにやや戸惑う蒼矢だったが、影斗は笑顔で畳みかけていく。
「門限とかはねぇよな? そんなに遅くはならねぇ予定だけど」
「あ、あの」
「都合悪かった?」
「…いえ、そんなことは…」
「じゃ、決まり! ガッコ終わったらI駅西口のスタバ集合な。あ、一旦家戻って着替えて来いよ? 制服のまま来んなよ!」
「…はい」
かなり強引に進めたものの約束を取り付けた影斗は、上機嫌で蒼矢と分かれる。
放課後までの時間が待ち遠しく、その日は一日心が躍った。
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