第11話_指導者からの干渉

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「…その程度の理由なら、今後髙城(タカシロ)に近付くのはやめてくれないか?」 「…!」 影斗(エイト)はやや目を見開いて学年主任を見上げる。 「入学当初から知っているなら、髙城がどういう立場でうちに入って来たかわかるだろう? 学校側は彼の今後に期待している。その分、我々は学校生活において安全を確保し、見守ってあげなければならない」 「…」 「…正直に言うと、お前が彼の近くにいるのは体裁が良くない。仮にお前側に他意が無いとしても、不要な心配をしなければならなくなる。既に生徒達の注目も集め始めている…このままだと、どこぞの保護者から問い合わせが来るかもしれない」 学年主任は淡々と続けるが、表情には幾分か憂いが混ざっているようだった。 無表情で黙ったままこちらを眺めている影斗に、猿渡(サワタリ)は身を乗り出して顔を近付けた。 「宮島(ミヤジマ)、お前の素行には目に余るものがあり過ぎるが、他生徒に影響がない程度ならもう何も言わない。…頼むから、これ以上波風立てんでくれ」 「……」 「お前と付き合うことだけを言ってるんじゃないんだぞ? …お前と行動を共にすることで、お前が付き合ってる他校の生徒が、髙城に悪い影響を与えやしないかと心配してるんだ。それだけは避けたい。親御さんに申し訳が立たない」 いつもの強面は鳴りを潜め、懇願するような表情で自分に訴えかける猿渡を見て、黙ったまま聞いていた影斗は、やがて小さく息をついた。 「…わーったよ。もう会わねぇよ」 「! 宮島っ…」 影斗の返答に感嘆の声をあげる猿渡だったが、横からさえぎるように学年主任がやや眉をひそめながら、机に手を置く。 「念のためだが…髙城には何もしていないな? …よもや手をあげたり、強請(ゆす)ったりなんてことは――」 「ねぇっすよ。本人に聞いてみりゃいいじゃん」 「……わかった」 ようやく納得したのか、学年主任も表情を戻し、机から離れる。 「もう行っていいすか?」 「おお、いいぞ」 それなりに満足した教諭陣を背に、影斗は会議室の扉に手をかける。が、開ける直前に振り返った。 「…この話、蒼矢(あっち)にはすんの?」 「? いや、お前にしかしないつもりだ。お前の方に話つけておけば、髙城からってことにはならんだろ」 「ああいう出来の良い子は総じてセンシティブなものだ。…入学してまだ間もないし、こちらとしてもあまり刺激を与えたくはない」 「…それならいいっす」 「頼むな、宮島! あ、授業は今後もしっかり出るように」 「へーい」 影斗は退出し、さっさとその場から離れる。 誰もいない廊下を折れると、ポケットに手を突っ込んだまま床を見つめ、深く息を吐き出した。 「…あーあ」 一応場はわきまえるものの、蒼矢(ソウヤ)にこちらの立場や意図を理解させないままだったので、結構おおっぴらにコンタクトをとってきてしまっていた。 教員の目にはつかないよう工夫していたが、生徒達にはどうしても気付かれ、噂される。 遅かれ早かれ、こうなることは予想ついていた。 それでも実際になってみると、思っていた以上にショックが大きかったことに、影斗は自分でも驚いていた。 「…結構ダメージ喰らうなぁ…」 影斗は再びため息を漏らしながら、半笑いを浮かべた。
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