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第12話_無自覚に及ぶ余波
裏でそんなことがあった次の日、いつものように少し早い時間に登校し、蒼矢は一人で学校の正門をくぐる。
てくてくと構内を歩いていたが、ふと動きが緩み、やがて中途半端な場所で立ち止まる。
「…」
辺りを見回してみる。
まばらに登校する生徒が遠目に見えるくらいで、何も変哲もない景色が広がっている。
蒼矢は一時地面へ視線を落とした後、またすぐに歩き出した。
「……」
そんな蒼矢の様子を、生徒指導・猿渡と一年の学年主任が、彼に気付かれない地点から見守っていた。
「…よし」
何かに納得できたのか双方で頷き合い、その場から離れていった。
やがて昼休みを迎える。
蒼矢はいつものようにコンビニの袋を手に下げ、一年棟を出て校舎外の温室へ向かう。
「?」
温室を視界に捉えたところで何かに気付いて足をとめる。
いつも必ず半開きになっている温室の扉が、今日はぴったりと閉まっている。
少し歩を早めてたどり着き、扉を開ける。中はいつもと変わらず栽培途中の苗がずらりと並び、奥には白いテーブルセットが寂しそうに置かれていた。
「……」
蒼矢はその空っぽのテーブルセットを見つめ、ついでコンビニの袋へ視線を落とす。
そのまま少しその場に立ち尽くした後、温室を出て一年棟へ戻っていく。
「あれっ、髙城?」
教室へ入りかけると、入り口で蒼矢と同じようにコンビニの袋や弁当箱を手に持った同級生達とすれ違った。
「…もしかして、昼まだなの? 僕達と一緒に食べない?」
蒼矢が手に持つ袋に気付き、同級生は嬉しそうに声をかけてきた。
断る理由もないため、蒼矢は二つ返事で了承し、彼らについていった。
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